前の記事では、いまの家計を紙に出して、「急に仕事を手放す段階ではない」と確かめた話を書きました。生活費は月23万円。すぐ使えるお金は、その暮らしを8ヶ月ほど続けられる分でした。
そのときは、「8ヶ月ほど持つなら、半年は大丈夫だろう」と受け取っていました。
崩したのは、妻の一言でした。「辞めたら、今お給料から引かれてるお金って、どうなるの?」
……どうなるんだろう。答えられませんでした。それで後日、給与明細とノートと電卓を並べました。今回は、在職中には自動で処理されている支払いを、退職後の家計にどう置き直すかを確かめた話です。先に結論を言うと、「8ヶ月分」は、8ヶ月分ではありませんでした。
手取り28万円の「手前」で引かれているもの
僕の手取りは月28万円ほどです。でも給与明細をよく見ると、その手前で、健康保険料、厚生年金、住民税が引かれています。20年明細をもらっていて、正直、この欄をまじまじ見たことがありませんでした。引かれたあとの「振込額」しか見ていなかったんです。
会社員でいるあいだは、これらは勝手に処理されていきます。でも辞めたら、この「勝手に」が全部なくなる。自分で手続きして、自分の貯金から払うことになります。つまり、辞めたあとの生活費は「月23万円」のままではない、ということです。
ここで必要なのは、退職後の支払いを正確に当てることではありません。住む地域、前年の収入、家族の状況、退職する月で額は変わります。僕がやったのは、明細から「会社が一部を負担してくれているもの」と「翌年まで影響が残るもの」を拾い、生活費とは別の欄に置くことだけでした。
電卓を叩いて分かった、3つの「増える支出」
調べながら、ノートに3つ書き出しました。正確な金額は人によって全然違うので、ここでは僕が電卓を叩いたときの「イメージ」として読んでください。実際の額は、市役所や年金事務所、会社の総務で確認するのが確実です。
1つ目、健康保険。会社を辞めたら、いま入っている健康保険を任意で続けるか、国民健康保険に入るかを選ぶことになるそうです。任意で続ける場合、いままで会社が半分持ってくれていた分も自分で払うので、明細の保険料のほぼ倍のイメージ(上限はあるようです)。倍、です。電卓を叩く指が一瞬止まりました。
2つ目、年金。厚生年金から国民年金に切り替わって、月17,000円台。厚生年金より払う額は減りますが、そのぶん将来もらえる額も減る。「払いが減ってラッキー」とは素直に喜べない種類の数字でした。
3つ目が、いちばんの盲点でした。住民税です。住民税は前の年の所得をもとに計算されるので、辞めて収入がなくなっても、翌年は「働いていた頃の額」の請求が来るそうです。収入ゼロの期間に、現役時代の税金を払う。これは知らずに辞めたら、かなり慌てたと思います。
この3つを見てから、僕は「いくら残っているか」だけでなく、「いつ、何の支払いが来るか」を月ごとに考えるようになりました。残高を一つの大きな数字で眺めるより、支払いの順番に分けた方が、電卓ではずっと現実的に見えました。
「8ヶ月分」は、6〜7ヶ月分だった
この3つを月々の支出に足していくと、辞めたあとの1ヶ月は、23万円ではなく、ざっくり数万円上振れする計算になりました。細かい前提でだいぶ変わるので断定はしませんが、僕の電卓では、貯金8ヶ月分だと思っていたものが、実際には6〜7ヶ月分。
「半年暮らせるか」という当初の問いへの答えは、「暮らせる。ただし、思っていたより余裕はない」でした。
ついでに書くと、自己都合で辞めた場合、失業給付もすぐには出ないそうです。あてにしていた順番で入ってこない。ここも、辞めてから知るのと、辞める前に知っているのとでは、心の余裕が全然違うと思います。
数字が小さくなったのに、不安は小さくなった
不思議なもので、見込みの月数が短くなったのに、気持ちは前より落ち着きました。
たぶん、頭の中の「なんとなく大丈夫」より、支払いの月を並べた「6〜7ヶ月」のほうが、信用できるからです。電卓は、不安を大きくも小さくもしません。見落としていた項目を、目の前に出してくれるだけです。分かれば、準備する順番も決められます。
ちなみにこの電卓の結果は、妻にも見せました。「じゃあ、当分は辞めないんだね」と笑われましたが、その通りです。ただ、質問をくれたのも妻なら、数字を一緒に見てくれるのも妻です。頭の中の不安を食卓の上の数字にできたのは、あの一言のおかげでした。
僕の対策は、いまのところ「辞めない」です。そのかわり、半年〜7ヶ月ぶんの土台があると分かった上で、夜の副業を淡々と続ける。いつか本当に辞める日が来るとしたら、それは勢いではなく、この電卓の数字と副業の数字が、ちゃんと入れ替わったときだと思います。AI副業の全体像はロードマップの記事にまとめてあります。
まとめ:辞める前に、電卓で「実寸」を知る
まずはいまの家計を確認する。その次に、今日書いた「退職後に自分で払うもの」を別欄に置く。二段に分けると、手元のお金が実際に何ヶ月分なのかが見えてきます。僕の場合は、8ヶ月だと思っていた数字が6〜7ヶ月になりました。
数字は人によって全然違うので、僕の額はあくまで一例です。ただ、「手取りの手前で引かれているもの」を一度も見たことがない人は、明細を開いてみる価値があると思います。20年見てこなかった僕が言うので、間違いありません。
次回予告
次回は、副業の最初の3ヶ月、僕が「お金をかけなかったもの」の話です。AIには月2万円以上払っている僕が、何にお金を使わなかったのか。ケチの話ではなく、線引きの話をします。

